早朝の周回道路

毎度の事だが西表島最初の朝が来た。気合を入れて日の出前に部屋を出ると、水平線が茜色に染まっていた。
遠くの森からリュウキュウコノハズクのキョホッが聞こえ、アカ様のキョロロが響き渡る。八重山に来たのを実感する。

 さあ、それじゃ朝撮りに出発だ。と言ってもここでアカ様を確実にゲットするのは難しいだろうからターゲットがいまいち定まらない。どこに行くか悩む所だ。
 しかしこんな早朝で、まだ今日一台も車が通っていなかったとしたら、もしかして周回道路でイリオモテヤマネコが見れるかも。そんなかすかな期待を胸に、人気のなさそうな大原方面へ向かうことにした。

 途中、海からの朝焼けを見ようと船浦港に寄ったら、電柱の上にカンムリワシ発見。まだ薄暗い中、助手席にあったD7000+50-500mmで撮影を試みる。レンズを窓枠に押し付けてなんとか証拠写真をゲット。

 やっぱり早朝は生き物の動きが活発なんだな。これは朝焼けなんか見てる場合じゃないとすぐに周回道路に戻り、路肩の動きに気をつけながらゆっくりと大原方面を目指す。

 道端には猫注意の立て看板がいくつも立っていた。昨日レンタカー屋のおじさんに聞いた話だと、最近ヤマネコの姿が見られた場所にこの看板が立っているということなので緊張感が高まる。が、成果はなし。

 時折何か大きなものが藪に逃げ込むのが見えてドキっとしたが、どれもイノシシだった。
イノシシは意外と素早くてカメラを手にとる暇もなく森の中に逃げ込んでいってしまう。
イノシシでこれじゃ、山猫なんていても撮れっこないかもな。

 やがて海の向こうから朝日が昇ってきた。

 そんな朝日に照らされて赤く染まっていたのはまたしてもカンムリワシ。車を止めて三脚にロクヨンをセット。
そっと近づいてみるが、警戒心は少なくてでっかく撮らせてくれた。

 近くの電線にはリュウキュウズアカアオバトもとまっている。ここらでおなじみの光景だ。

  よーし、鳥撮りはだんだん八重山らしくなってきたぞ。
でもここまで日が昇ってしまうともうイリオモテヤマネコは無理かな。やっぱりこちらはそう簡単な事じゃないようだ。

 再び車に戻り周遊道路をゆっくり走り始めると、道路際に佇んでいたリュウキュズグロミゾゴイ発見。しかし車を止めたとたん森の奥へ飛んでいってしまった。やっぱり西表の生き物はカンムリワシ以外は警戒心が強い・・・

 大謝見ロードパークに着くと車を駐車場に停め、カメラの準備をする。ここはマングローブのボードウォークがあるので少し歩いてみようと思ったのだ。

 そこへ軽トラが入ってきたと思ったら、降りてきた犬連れのおじさんがそのままボードウォークに散歩に行ってしまった。犬の後を付いていってももう鳥は無理だろうなあ。ここは時間がもったいないので諦めて引き返すことにする。

 再び車に乗り込み、さっきのリュウキュウズグロミゾゴイポイントの手前まで来た。もしかして戻ってきているかもしれないので、今度は片手にカメラを握り、ゆっくりゆっくりと車を進めた。そしてカーブを曲がると・・・さっきとの所にリュウキュウズグロミゾゴイは戻ってきていた!しかしこちらに気付きすぐに飛んでしまい、撮れたのは飛んでゆく後姿だけだった。

 でもここで待っていればまた戻ってくるかもしれないと思い、路肩に車を寄せてエンジンを切ると、近くからアカ様のキョロロロが聞こえてきた。サンコウチョウもすぐ近くで鳴いている。ここは中々鳥影も濃そうなのでしばらく粘ってみるか。他に行く所もないしな。

 アカ様の声はすぐにキョロッ キョロッ・・・と遠ざかっていってしまったが、サンコウチョウの「ギッ ギッ ホイホイホイ」と言う声は道を挟んで両側から聞こえてくる。2羽が縄張り争いをしているのだろうか。

 声が聞こえてくるのはすぐ道路際の林の中なのだが、姿は全然見つけられない。いったいどこに居るんだ?
 と、いきなりその辺からサンコウチョウのオスが長い尾羽をひらひらさせて飛び出して、そのまま道路を横切った。
 石垣ではサンコウチョウはあまり見ないから、ここで撮っておくべきはやっぱりサンコウチョウだろう!・・・とこの選択が失敗だった。

 道を挟んで右から左へ、左から右へと飛び交うサンコウチョウ。しかし見えるのは路上を飛び去るその姿だけ。
 さらによく見ていたら、オスだけじゃなく尾羽の短いメス、そして数羽の幼鳥が一緒に行動しているらしい。

 ちょっと森の中に入れそうな踏み跡があったので、ハブにビビりながらも行ってみると、奥の木にリュウキュウサンショウクイが飛んできて羽繕いを始めた。

 良かったのはこれくらい。肝心のサンコウチョウの姿は時折視界には入るのだが、何せ落ち着きがなく、
カメラを向けたとたんに場所を移動してしまい中々ファインダーにも入れられない。

 そんなサンコウチョウに翻弄されているうちに時間はどんどん過ぎて行き、気がついたらもう8時過ぎ。
 この先撮れる気もしないし、藪の中を中腰で歩き回って疲れたよ〜

 しかしこれだけ粘って撮れたのは若オスと思われるのが数カットだけと言う貧果、やっぱり西表は手強いな。

 まあ宿に戻ればエリグロアジサシが撮れるだろうから、今日のところは切り上げて帰るとするか。朝ごはんも楽しみだしね。

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