やんばるの朝はアカヒゲから
  やんばる最初の朝が来た。裏山からはアカヒゲの囀りが聞こえてくる。まだ薄暗い中出発。


 今日は7月24日、実は僕の誕生日なのだが、ここのところ毎年旅先でのお誕生日なのであんまりイベントっぽいことしていない。
 せめて誕生日祝いにアカヒゲとヤンバルクイナあたりがばっちり出てきてくれると嬉しいのだが。

 問題は車だ。果たしてこんなでかい車で林道を走り回れるのか・・・いまいち車幅感覚もつかめず、しっくりしないまま林道へ突入。

 しかし山の中に入ると思いのほかアカヒゲの囀りは聞こえてこない。いつもの5月と比べると、子育てもある程度落ち着いてしまったのだろうか。

 その代わり聞こえてくるのが「ビッ ビッ」というロビン系の警戒音。アカヒゲいることはいるみたいだ。車をゆっくりと進めていくと、警戒音がかなり近くで聞こえてきた。ブレーキを踏み待機。こんな時ハイブリットはエンジンの振動がなくてよい。

 しばらくすると助手席側の木にアカヒゲ登場。早速レンズを構える・・・が、助手席の窓遠すぎっ!
やっぱりこの車は無駄にでかい。そのくせ天井は低いので、フードをつけたままのロクヨンを振り回すのが非常に困難だ。やっぱアクアが良かったよ〜

 それでもなんとかアカヒゲゲット。まだ暗いのでISOは3200。厳しいな。
でもまだこれからチャンスはいくらでもあるだろう。


 と思ったが先が続かない。警戒音は聞こえるけれど姿は見えず。遭遇を期待してどんどん車を進めていくと、予想通り道は車幅ギリギリ。両側から張り出した草が車体をこするキュルキュル言う音が気持ち悪い。対向車が来たらすれ違うことも出来ないだろうな。

 こうなると目標は鳥探しより林道走破って感じになってきた。つらいよ〜
 そんな中、はるか前方の路上を横切る影、ヤンバルクイナだ!こっそりと窓からレンズを出し一連写!

 しかしまだ50mくらいはありそうなのにこちらに気付かれ、ヤンバルクイナは藪の中に隠れてしまった。相変わらず警戒心が強いなあ。

 結局満足に撮れないままふたたび発進。路肩に落ちないように気を使いながらやっとの事で林道を抜けて海沿いの国道に出た時にはもう林道には戻りたくない気分だった。

 海の向こうにはもう太陽が昇っていた。今までの経験からするとこの時間帯になるともうヤンバルクイナはそう簡単には見れなくなってしまう。ここでヤンバルクイナに固執するより今日のところはもうアカヒゲ一本に絞ったほうがいいだろう。狭い林道を走り回るのもしんどいし・・・ ということで、前にいい思いをした場所に向かう。

 国道をちょっとそれ林道に入り目標地点に近づくと、周りから数羽のビンビン声が聞こえてきた。
そして前方路上を歩くアカヒゲのメス発見、やっぱりこのポイントは当たりみたいだ。


 さらにそのすぐそばのガードレールの上にアカヒゲのオスが飛び乗った。ビンビン鳴きながらメスを威嚇しているようだ。この時期になるともう番でなく1羽づづが縄張りを持つようになってくるのかも。


 車を出来るだけ路肩に寄せて停めると、さっきのメスが下草の中を移動しながらこちらにどんどん近づいてきた!距離にしてほんの数メートルだ!


 するとそれを牽制するようにオスも「ビッ ビッ」と鳴きながらだんだん近づいてくるじゃないか!どうやら車を停めたあたりが縄張りの境界になっているようだ。
 そしてオスが運転席側すぐそばの枝に止まった!これなら何とかカメラもまともに構えられるぞ。
息を潜めて窓からレンズを出しシャッターを切る。

 やった〜、初日にしてアカヒゲオスのデッカちゃんゲット!お誕生日プレゼントはこれで充分だ。
贅沢を言えばちょっとデコが禿気味なのが残念だけど・・・
サンコウチョウもそうだがこの時期は羽毛の抜け替わりの時期なのだろう。


一息ついて見上げると、道路に覆いかぶさるように茂ったヒカゲへゴの葉っぱが目に入る。
ここはやんばるのジャングルの真っ只中。幸せだ〜


 やがてアカヒゲ雄は雌を追いかけるように谷底に消えて行き、あたりは静かになった。
よっし、この調子でもうちょっと奥まで行ってみるか。

 しかしその後も何度かアカヒゲに遭遇するが、ガードレールや路上など人工物がらみの所ばかり。アカヒゲは大抵路肩の藪の中にいるから目立つところに出てくるとなるとこんなシチュエーションになってしまうのだが、これじゃちょっと興ざめだよなあ・・・

 と凹んでいたら、道路際の土の上に愛想のいいアカヒゲオス発見。ん?でもちょっと様子が違うぞ?と思ってファインダーを覗くと、首周りにまだヨダレカケのような白い羽毛の付いた若オスだった。GWに会う若オスはまだこんなにしっかり黒いところは出ていなかったから、2か月分の成長の成果なんだろう。

 でもやっぱりちゃんとした黒ヒゲが撮りたいよなあ・・・

 と思いながら林道を走り回るが、その後遭遇りた黒ヒゲはガードレールに止まっている一羽のみ。禿げていない立派な黒ヒゲだったんだけどねえ。


 こうして黒ヒゲを探し林道を走り回り、結局やんばるの山を横断して反対側の海に出てしまった。

 時刻はもう10時。誕生日という事で多少は大目に見てもらえるかもしれないけど、いいかげん宿に戻ったほうがいいかな。

 もう藪まみれの狭い林道を通るのは嫌だったので海沿いの道を通って宿に向かったが、最後にちょっと近道をしようとダートに入り2kmほど進むと道の真ん中に作業車が止まっていた。その先では測量の真っ最中だ。向こうはお仕事、こっちは遊び、当然測量を中止して移動してもらうわけにもいかず先に進めない。かといってこの大きな車をUターンさせるスペースもないというピンチに陥ってしまった。

 途方にくれて車から降り振り返ると今走ってきた轍が雲間からの太陽で浮かび上がっていた。

しょうがない、ここからバックで国道まで戻るしかないか・・・

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