準備万端でフロントに行くと、江頭2:50と欽ちゃんを足して2で割ったような、人の良さそうなおじさんが待っていた。
彼が今回ガイドをしてくれるバリバラット国立公園のレンジャー、Yudiさんだった。サファリルックに身を包んだその姿は中々頼もしそう。挨拶をして握手を交わす。宜しくね。
早速セアカミツユビは見れるでしょうか?とたずねると、それは多分大丈夫だという。マジっすか! でもキマユシマヤイロチョウはこの時期ちょっと厳しいかもしれないそうだ。いやもうセアカミツユビさえ撮れればなんも言う事ありません。
Yudiさんの話だとセアカミツユビポイントの近くでヒメアオカワセミも見れると言う。おお〜カワセミ三昧だよ、いいね〜
それじゃそろそろ出発しましょうか、で、どの車に乗ってくのかな?ん?このスクーターに2ケツですか。
まあこんなのも旅の醍醐味、ヒメアオさえ撮れればなんでもいいっす。でもタンデムシートが微妙に後ろに傾いてるんだよな。ちょっと落っこちそう。かといってYudiさんに腰に手を回すってのもなんだし、ここは腹筋と背筋で頑張るしかないか。 そして三脚とロクヨンを抱えたオッサン二人を乗せて、最大積載量オーバーと思われるスクーターはムンジャンガンリゾートの敷地を抜け、久しぶりの一般道路をラブアンラランに向けて走っていった。
落っこちないようにくるぶしでタンデムステップを挟み頑張る事10分ちょっと、Yudiさんは民家の前でスクーターを止めスコープのセッティングをはじめた。どうやらここがポイント?ぼくも半信半疑でカメラのセットをする。
でもここって民家だよなあ・・・Yudiさんはそこの住民と二言三言言葉を交わすと、「行くよ」といってよそんちの庭に入っていった。
僕も「スラマッ パギ」とあいさつしながらYudiさんの後に付いて庭を横切ると、マングローブがまばらに生えた海岸に出た。ウ〜ン、なんかいい感じの場所だなあ。さすがプロのガイド、いい場所知ってるよ。
Yudiさんに「ヒメアオが見られるから注意して付いて来るように」といわれ。気持ちを引き締める。
しばらく行くと、ハリオハチクイが枯れ木のてっぺんに止まっているのを見つけた。今回のバードウォッチングガイド初の獲物だ。
この海岸には川が流れ込んでいて、今度はその川沿いに上流に向かった。遠くから「チーチー」とカワセミ系の声が聞こえてきた。Yudiさんは「ヒメアオの声だ」と言って、時々草陰から川面を覗きながら慎重に進んでいく。
マングローブの木がガサガサいうのでなんだろう?と固まっているとリスが出てきた。こいつが正体だったか。
川からは頻繁にヒメアオの声が聞こえてくるが、姿は見えない。
Yudiさんは一度川岸のトウモロコシ畑に入り、そこを横切って蛇行した川の上流側にある橋のたもとに出た。
上には国道が通っている。
ここらへんはヒメアオとセアカミツユビ両方のポイントなんだそうで、Yudiさんはしばらくここで待ってみようと言った。
いよいよセアカミツユビの世界に入ってきたんだ。緊張するな。
川は橋の上流で大きくカーブして赤土のバンクになっていて、セアカミツユビは良くそこに止まっているそうだ。Yudiさんが慎重に探すが姿は見えないし声も聞こえない。
そのかわり下流側から聞こえていたヒメミツユビの声がだんだん大きくなり、ついに見える所まで来てくれた。
距離にして30m以上はあるだろうか。40Dでも結構遠いけれど、ヒメアオは時折チーチー鳴きながらも、ずっと同じ場所に止まっていてくれた。こうなるとデジスコの出番だ。
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EOS40D+600mmf4IS+Extender1.4X かなりトリミングのヒメアオカワセミ |
レンズが動かないように雲台をロックして、ボディーをデジスコシステムに切り替えてひたすら連写した。
川面からの陽炎でそれほどクリアには写せなかったが、でっかくだけは撮れたぞ。なんかデジスコ癖になる〜
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600mmf4IS+NikonDS接眼50X+IXY1000のデジスコ、ほぼノートリでこれくらい |
そのうちもう1羽のヒメアオがやってきて、2羽で下流に飛んでいってしまったのでヒメアオタイムは終了。
次はいよいよセアカミツユビ探しだ。
川から一度道路に上がり、道を渡って向こう側の森の中に入っていく。わずかな踏み跡があるけれど、一人で来たら迷ってしまいそうだ。この鬱蒼とした森はキマユシマヤイロチョウのポイントらしい。この鳥は警戒心が強いので、できるだけ足音も立てないよう言われ、抜き足差し足で進んでいく。
ヤイロチョウは歩いてくるときガサゴソ音を立てるので、その音を頼りに見つけるようだが、雨季は葉っぱがいっぱい茂りすぎていて姿を見るのは難しいそうだ。時折立ち止まって耳を澄ますものの、結局その姿は見られないままヤイロポイントを通過しちょっと下ると乾いた河床に出た。
おおっ、ここはまーさんのレポートにあったセアカミツユビポイントではないか!夢にまで見てた場所に実際に立てるなんて感動だ〜
Yudiさんについて河床沿いに進んで行くと、ヒメアオとはちょっと違うカワセミ系の「チーチー声」が聞こえてきた。Yudiさんは「これがセアカミツユビの声だよ、近くにいるみたいだ」といって藪の中を透かし見てその姿を探しはじめる。
と、その時、10mほど先の枝に真っ赤な小鳥が飛んできた。Yudiさんに「アレはっ!」と聞くと「Yes!」との答え・・・・・
セアカミツユビだ〜〜!ホントにいたんだ〜!スゲー!その姿は暗い森の中でも光り輝いていた。
しかし僕も一歩先を行くYudiさんも、突然の出会いに固まってしまい、三脚を下ろす事も出来ない。そしてセアカミツユビはすぐに藪の中消えていった。
Yudiさんは「大丈夫、また見られる」と言い耳を澄ます。周りの森からはまだチーチー声が聞こえている。そう遠くへは行っていないようだ。
声を頼りに河床から林の中に移動し忍び足で進んでいくと、とYudiさんが突然立ち止まり、そっと藪の中を指差した。えっ!いるの!?どこだ?
Yudiさんに手招きされて近づき指差す方を見ると、おおっ、葉っぱの向こうに赤いものが見えるっ!ホントに真っ赤だ。
大興奮で三脚を立て、葉っぱカブリがない場所を探すが中々抜ける場所がない。
三脚の足を伸ばしたり広げたりしてなんとか姿が見える場所を探し、ファインダーに入れる。当然AFは効かないからマニュアルフォーカスでピントを合わせると、ファインダーに浮かび上がったのはまぎれもないセアカミツユビだ。背中が紫色に光っている。きれいだ〜。とにかく気を落ち着かせて一連写。そして飛ぶ。
やった〜!証拠写真ゲット〜〜〜!その初セアカミツユビショットがこれ。
Yudiさんありがとう〜!ハイタッチで喜びを分かちあった。
こうなると欲が出てきてもっとクッキリ撮りたくなる。セアカミツユビはまだそこら辺にいるようだ。
Yudiさんは葉っぱと葉っぱのあいだを縫うようにして、ピンポイントでセアカミツユビをスコープに入れてくれる。
おおー!今度はさっきより抜けてるぞ。慌ててレンズを向けファインダーに入れるがやっぱり葉っぱが被る。
全身とは言わないけど、せめて顔だけでもクッキリ撮りたいよ〜
とここで第1次ヒメアオタイムは終了。
林から乾いた河床に降りて、ミネラルウォーターを飲んでひと休み。蚊がすごいのでYudiさんが虫除けクリームを分けてくれたので、腕や首に塗りたくった。
そして再び捜索開始。さっきからかすかに声は聞こえていたので再びYudiさんの葉っぱの隙間サーチ。
僕にはどこにいるんだか全然見当も付かないが、Yudiさんはあっさり見つけてくれる、すごい。ガイドをお願いしてホントに良かったよ。今度はうっすら前ボケで葉っぱカブリがあるが全身見えるぞ、でもからだの真ん中に枝が〜〜
これさえなければかなり満足だったのに・・・・
しかしその後もYudiさんの隙間サーチは止まらない。一度姿を見失ったものの、声を頼りに10mほど移動し、手招きしながらスコープを操作している。そ〜っとそこまで移動してスコープを覗かせてもらうといいところに止まってる!
カメラをセットしファインダーを覗き、枝カブリを避けて右へ左へとちょっとづつ移動してベストスポット発見。今度はすっきり全身が入っている!シャッターを切る!やった〜!渾身の一撃!やっとまともなセアカミツユビゲットだ〜!
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40D+600mmF4IS+Extender1.4X トリミングのセアカミツユビカワセミ |
ここではしばらくじっとしていてくれ余裕もできたので、再びデジスコシステムにチェンジ。ノートリデッカチャンもゲットだ。
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600mmF4単体でデジスコだとノートリでこれくらい |
ふ〜、セアカミツユビカワセミこんなにいっぱい撮れるとは思わなかったなあ。とっても幸せだ。
しかしここでまたYudiさんに動きが・・・藪の中をを透かし見て「2羽いる!」という。まじっすか!
Yudiさんのところに行って指差す方を見るとほんとに2羽いる!とにかくファインダーに入れシャッターを切るが、シャッタースピードが遅い・・・これは連写で何とかするしかない、とシャッターを押し続けているとセアカチャン給餌しはじめたじゃナイデスカ〜!
初めて見たセアカミツユビ!本には「とても警戒心が強くて見るのは至難の技」と書いてあったセアカミツユビカワセミ!カワセミよりちっちゃいのにアカショウビンのような色をしてる、まさにミニアカショウのセアカミツユビカワセミ!それが給餌してるなんて〜〜〜っ!
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セアカミツユビカワセミ!給餌っ!給餌っす! |
目の前の給餌はあっという間に終わってしまったが、その姿はしっかりまぶたとCFカードに多分焼き付けられただろう。ほんっとにガイドをお願いしてよかったよ!
時刻は昼を回っていた。僕もそろそろひーことたいきに昼ごはんの給餌をしなくてはならないので、これを機にそろそろ引き上げる事にする。帰り道はなんだかボ〜っとしてしまい、鳥を探す事もなくスタスタ歩いていった。セアカミツユビカワセミでもう満腹状態だったからな〜。
そして再びバイクにしがみつき、ムンジャンガンリゾートまで送ってもらった。
別れ際、Yudiさんに「明日もガイドお願いできますか?」と聞くと「大丈夫!それじゃ明日はギリマヌクの湾に行って、ボートで沖のマングローブまで行ってみよう。潮が引いて広大な干潟が現れ、ヒメアオカワセミのホバリングが見られるかも知れないよ」という。いいっすね〜それじゃ明日は6時にフロント待ち合わせってことでよろしくお願いします。たのしみじゃ〜
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