海岸に沿って進んでいくと、湾の奥にマングローブに覆われた川が現れた。ここがセレベスコウハしショウビンのポイントらしい。
ロングテールポートは河口に入るとエンジンを止め、船頭さんのオールさばきで静かにマングローブに覆われた川を進んで行った。あたりにはオールが水をかく音だけが響き渡る。
アテン君の話だと、普段は10分も進めば川に張り出した木の上に止っている姿を見る事ができるんだけど、ということだが、今日は全然気配がない。
時折普通のカワセミが止っているのが見えるが、アテン君は完全無視。まあわざわざスラウェシまで来てカワセミもないか。こっちも気にせずそのままボートを進め、当然カワセミは飛び去る。
しかし日本に帰ってからまーさんに教えてもらった所によると、スラウェシのカワセミは耳のオレンジ色がない亜種だったんだそうだ。それはちゃんと見ておきたかったぞ〜 アテンのヤロ〜
30分ほど遡っただろうか、とうとうボートはセレベスコウハシショウビンの姿を見つけられないまま、川幅が狭くなってこれ以上進めないところまで来てしまった。
アテン君の提案で、ここで10分くらい待ってから、もう一度下ってみることにする。もしかしてここいる間に下流から飛んでくるって可能性もあるしね。
そして何事もなく10分経過・・・・再び川を下りながら探索開始。
しかしかなり注意深下ったにもかかわらず、川に浮いた竹にイソシギが止っているのを見かけたたくらいで河口まで着いてしまった。
アテン君は「普段は簡単に見られるんだけど・・・先月アメリカのフォトグラファーを連れてきた時は、すぐに川に張り出している木に止っているのを見つけられたんだけど・・・」と意気消沈している。まあ自然相手のことだからしょうがないよ。それにこういうの日本では慣れっこだし(^^;
でもアテン君にしてみれば、自信満々でつれてきた手前、あせってるんだろうな。
「そのフォトグラファーは他のカワセミ類も撮れたの?」と聞くと「4日間いて他にはアオミミショウビンだけだった」というので、「それならチャバラもセレベスカワセミも撮れたうちらの方がラッキーじゃん」と元気付ける。
それじゃ気を取り直してもう一度遡行にチャレンジしようか。なんか船頭さんはもう疲れてしまったようで、今度はエンジンをかけて進むようだ。それじゃうるさくて逃げちゃうんじゃないの?もしかして最初のはイベントで、エンジン音なんか実はあまり関係ないのかな?
しかし結局今度もセレベスコウハシショウビンの気配がないままさっきの行き止まりの場所まで到着してしまった。
最後の最後のチャンスにかけて、またここでしばらく待ってみるが、たいきはすっかり飽きてしまい、超不機嫌(^^;もうちょっと辛抱してね。
アテン君はポケットから自分のデジカメを出して
「壊れちゃったんで見てくれない?」というので色々いじってみたが、やっぱり壊れてるみたいだ。セレベスコウハシも見れないしデジカメも治らないしでなんかこっちが申し訳なくなっちゃうよ。
結局ここでも何の気配もないまま、まあ今回はしょうがないか、と半ばあきらめムードで川を下り始める。
アテン君と「次回来た時にはもう一度チャレンジしようね」としゃべっていると、ちょっと奥まった川岸の木に白っぽい鳥が止っているのが目に入った。
アテン君が大慌てで「Great-billed
!」と叫び、船頭さんも大慌てでエンジンをリバースに切り替えブレーキをかける。
おおっ、確かにあれはセレベスコウハシショウビンだっ!僕も大慌てでファインダーに入れてシャッターを切る。
しかしセレベスコウハシショウビンはあっという間に森の奥に飛び去ってしまい、結局こんなブレブレ証拠写真しか撮れなかった(;_;)
ちなみにこのときSSは1/15。揺れるボートの上じゃ厳しかった〜。もっとISO上げとけばよかった。もしくはサンニッパにしておけば・・・いかん物欲が・・・
アテン君によると、うちらがビックリしちゃったから向こうもビックリしてすぐ逃げちゃったんだそうだ。
たしかに僕もビックリしたけど、楽勝だといっておきながら散々探しても全然見つけられず焦りまくってたアテン君が一番ビックリしてたと思うんだけどなあ(^^;
でもまあ一応姿は見られたのでアテン君とハイファイブをして喜びを分かち合ったのだった。
まあこのかたは青くないナンヨウショウビンって感じでそれほどフォトジェニックなお姿はしていらっしゃらないので、ちゃんと撮れなくてもそれほどショックじゃない。さあ、これで今日の目標は一応達成したし、あとはタンココに戻るだけだ。
帰りはたいきを先頭に乗せてやったらご機嫌も治り、船酔いもどこかに行ってしまったようで、目指せタンココ!なんてやっている。遠くに見えるタンココ山には雲がかかり、また雨が本格的に降り出しそうな雰囲気だ。早く屋根のあるスピードボートに戻らないとびしょぬれになりそうな予感。
タンココに戻った時には再び波が高くなっていた。アテン君がひざまで海に浸かってボートを岸まで引き寄せてくれたので、そのタイミングを逃さずスピードボートに乗り移る。
アテン君にお礼を言おうと振り返ると、かれは慌ててズボンのポケットから携帯を取り出しているところだった。あちゃ〜、もしかして水没しちゃった?なんか今日はついてないねえ・・・
それでもうちらの視線に気が付いたアテン君は気丈に笑顔を作り、ロングテールボートに飛び乗ると、うちらのスピードボートと一緒に出航した。
ボート二艘で併走しながらアテン君に手を振って別れを告げる。さようなら〜どうもありがとう。もしまた来ることがあったらその時もよろしくね!携帯水没しちゃっても泣くなアテン君!
そしてアテン君達ののボートはBatu
Putih村へ、うちらのボートはプリサンへと別々の航路をたどり、離れ離れになっていった。
これにて短かったタンココ国立公園での日々は終了。ほぼすべては昨日の午前中に集中していたが、目的は大体達成出来たし、予想外のセレベスカワセミも撮れたし、はるばるここまで来て良かったよ。
心配していた雨もプリサンに着くまで何とか持ってくれた。
部屋に戻ると今日も水浴び。相変わらずイチゴ石鹸は泡立たず、今朝海で洗った髪はごわごわだが、さすがに3日目ともなると大分慣れてきたようで、初日と違って結構さっぱりする事ができるようになった。頭はなんだか痒いけど、明日は温水シャワーのあるダイブリゾートでたっぷり洗う事ができるだろう。楽しみだ〜
そして最後の乾燥パンツを履くと、さっぱりした気分でここでの最後の晩餐に向かった。
今日の晩のメインディッシュはシイラの丸焼き。外の炭火のかまどで焼いたようで、香ばしいにおいが漂っている。目玉を隠したニンジンがおしゃれかも(^^;これを村人のスタッフが切り分けてくれるのだ。
シイラは鰆のような白身で癖がなく、サンバルとアシンをかけて食べたらめちゃくちゃ美味しい。アシンは日本の醤油と似ているので、ほとんど焼き魚を食べている気分だった。
他にはベーコンの入ったスープ、白菜の炒め物、それにさつま揚げみたいなのを揚げたやつ。
こんな何にもないところで良くこれだけのものを作ってくれるよなあ。みんなきっと地元で取れたものだろうしレトルトなんてひとつもないんだろう(コーヒーはインスタントだけど^^;)
素朴な味で野菜が多くて美味しくて、毎日こんなの食べてたら健康になっちゃいそうだ。
食後は再びビールをもらいに行き、カトリンに借りていたダイソーのブルーシートをお返しする。
そして部屋に戻るとわずかの時間だけ使える電気を有効活用すべく、充電、バックアップと電子器機をフル活動させた。
充電が終わるまでの間、プリサン最後の夜を名残惜しみながらたいきとちょっとだけ夜散歩にいったのだが、カエルの声はにぎやかだったものの夜禽の声は全然聞こえなかった。
真っ暗な外から部屋に戻ると電球の光がまぶしい。電気の有難さを噛みしめながらしばらく天井の電球を見つめたあと、今日もベッドに潜り込み、たいきと一緒にファイナルファンタジーをはじめたとたん爆睡してしまった。
そしてこの夜も夜中に土砂降りの雨がトタン屋根をたたく爆音で目が覚める。雨季は大変だ・・・まあトッケイがいないだけマシかも。それにこれももう今晩だけの我慢だ・・・
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