1月13日 プリサン最後の朝

 結局雨、風、波の音がうるさくてよく眠れなかったが、明け方になって雨は収まってきた。
 眠い目をこすりながら外に出てみると、雲間からわずかに朝日が見えた。でも今日もどんよりした曇り空だ。

 コテージの前の道は昨夜の大雨で水溜りと化していた。すんごい降ってたもんなあ。
 今朝も暗いし期待薄な雰囲気ありありだけど、プリサンの村まで行ってみよう。もしかしたらセレベスブッポウソウが撮れるかもしれないしね。

 水溜りのような泥道を、ロクヨンを担いで歩き出す。
 山側の木には、今日もシュウダンムクドリが止まっている。この鳥固有種って言うから一昨日は大喜びで撮ってたけど、今ではすっかり普通種になっちゃったなあ。

 しかしそのあと、聞き覚えのある「クゥークゥー」と言う声が聞こえてきた。これってアカショウビンの声だよな。
 声が聞こえて来るのは高い椰子の木のてっぺんの方からだ。
 草むらをかき分けてその木に近寄っていくと、梢の辺りから赤い鳥が飛び出して海側のマングローブの方に飛んでいった。あのシルエット、やっぱアカショウビンだ。日本から越冬しに来てるんだろうか。

 これで今回確認したカワセミ類は7種類。さすが「Where to watch the bird in asia」で世界でもカワセミにはベストな場所と書いてあるだけのことはある。
 ここらへんで見られる可能のあるカワセミ系は、タンココ山山頂付近にしかおらず超レアだというチャエリショウビン以外全てクリア。

 アカショウビンが飛んでいったマングローブのあたりに行って見ると、再びクゥークゥー声が聞こえてきたが、すぐにこっちの気配に気付かれたようで、キョロッキョロッキョロッ・・・・と鳴きながら、声は遠ざかっていった。中々警戒心は強いようだ。でもせっかく見つけたんだから証拠写真くらい撮りたいよなあ。

 小川の所まで着き、ここを右に曲がれば坂を登ってプリサン村だけど、左に行くと海に出るだろう。そうしたらマングローブのところに出てさっきのアカショウビンにもう一度会えるかも・・・というわけでそちらに行ってみる。

 しばらく行くと向こうから現地の人がやってきたのでナンタラの一つ覚え「スラマッパギ」でご挨拶すると、ニコニコしながら「パギ」と返してくれる。やっぱ「おはよう」と「ありがとう」くらいは覚えておいて良かったなあ。

 そのうちすれ違う人の数が増えてきたと思ったら、村に出てしまった。
 建っている民家はうちらの泊まっているコテージと同じような作りだ。きっとここでも風呂桶の雨水でマンディをして、夜は電気もなく、と、プリサンでのうちらと同じような生活をしているんだろう。
 そう考えるとORAT家も電気や水道がなくとも自給自足でなんとか暮らしていけそうな気がする。

 みんなにパギパギ挨拶しながら村の中を道なりに進んで行くと海岸にでた。横には思ったとおりマングローブの川が流れていたが、ちょうど満潮に当たったようで川は深くて渡れない。ここから海岸沿いに宿までいけると思ってたんだけどなあ。マングローブの方も木の根元が波で洗われていて一歩も行けなそう。これじゃアカショウビンは無理か。

  しょうがない、あきらめてプリサン村まで行ってみよう。
 再び村の中を通り橋のところまで戻るとプリサン村への道を登っていく。
 今日も藪の中から鳥の声が聞こえるが姿は全然見えず、そのまま舗装道路まで着いてしまった。バンケンモドキもアオミミショウビンも何にもいなかったなあ・・・
どこかでアオバト系の声が聞こえるが、また雨が本降りになってきた。しょうがない。宿に戻ろうかな。

 クロックスよりさらに滑りやすいビーチサンダルでおっかなびっくり道を下っていくと、下から魚をぶら下げたお兄さんが登ってきた。肩に担いだ棒にぶら下がっていたのはサメのブツ切り、大迫力だ。
言葉はスラマッパギとトリマカシしかわからないので身振り手振りでお願いして1枚撮らせてもらった。

 今朝の収穫はサメだけかな。なんて思いながら竹やぶを抜けたとたんアカショウビンと鉢合わせしてしまった。距離はほんの数メートルだ。こんな所にいたなんて〜 目と目が合ってお互い一瞬固まったが、三脚をおろす間もなくアカ様は藪の奥へ飛んでいった。

 なんだか諦めきれずしばらくそこでまってみたが、結局撮れたのはカワセミならぬ綺麗なセミだけ。

 あれだけ思いっきり顔を合わせちゃ戻ってきてはくれないだろうな。また雨が強くなってきたし、荷物の片付けもしなくちゃならないのでそろそろ引き上げるとするか。
 このあとブナケン島に行ったらほとんど鳥なんていないだろうから今回の鳥撮りは実質これでほとんど終わりだ。名残惜しいけどしょうがない。


 今日は転ぶ事もなく無事部屋に戻り、みんなでプリサン最後の朝ごはんを食べに行った。
 メニューは昨日と同じパンケーキ、かと思ったら今日はバナナじゃなくてパイナップルが乗っていた。あとは一緒(^^;

 ご飯を食べながら、たいきに今回のプリサン滞在の感想を聞くと「最初はこんなトイレの水も流れない所でどうなるかと思ったけど、3日もいるとここもなかなかいいとこだと思えるようになって来たよ」だって。
 たいきは最初ウンコが流せず困り果てて僕らを呼びに来ていたのに、今じゃ手桶1杯の水でチャチャッと流せるようになったもんね。人間、こんな所でも三日もいれば慣れちゃうもんだよな。

 
 日本を発つ前に、メールでブナケンチャチャのレイコさんと打ち合わせをして、今日の昼12時にマナド港にピックアップに来てもらう約束になっていたので、ここを出発するのは9時半と言う事になった。

 なのであまりノンビリもしていられないので部屋に戻って荷造りをする。リュックにしまったロクヨンは、もう今回使うことはないだろうな。初日に調子に乗ってびしょ濡れにしてしまったトレッキングシューズはまだ全然乾いていない。はたして帰りの飛行機までに乾いてくれるだろうか。まあまだ5日もあるから大丈夫だろう。

 僕がパッキングしている間にひーこがカトリンのところでお支払いを済ませてきたが、今回3泊4日三食コミの宿泊費、僕だけタンココ朝撮り、午後のみんなでタンココ、昨日のボートでバードウォッチング、送迎、それにビール、ジュースを含めた合計は666US$ナリ

 時間になると、村人が集まってきて、大きな荷物を肩に担いで去って行き、手元に残ったのは40Dとサンヨンとコンデジ、それに身の回りのものと貴重品だけ。朝撮りよりずっと身軽だ。
 カトリンにお別れの挨拶をして、うちらも4日間お世話になったプリサンジャングルビーチリゾートを後にした。

 雨も上がってちょっと日が差してきたのであたりには蝶が飛び始め、水蒸気のもやが立ち込めてきた。
 スラウェシの雨季っていうのはこんな風に一日の中でコロコロ天気が変わるようだ。

 そんな中、プリサンを出てハイキング気分で歩いていると、椰子の林のほうからガサッ ガサッ、と言う音が聞こえてきた。なんだろう?と立ち止まって見いると、椰子の木の上のほうから人がスルスルっと降りてきて、手を振ってくれた。
 プリサンのスタッフはほとんどがここらへんの住民なので、彼ももしかして顔をあわせたことのある人かもしれない。でも良くあんな高い所に素手で登れるよなあ。

 道は水も掃けて大分歩きやすくなっており、いつもの橋の下を流れる川も、今朝より大分水量が減っていた。

 木漏れ日の中プリサン村への川沿いの道を登っていく。
 僕は毎日歩いていたが、ひーことたいきはここを登るのは初めてだ。ひーこはともかくたいきは大丈夫かな?とちょっと心配だったが、アスファルトの道でなければ意外と頑張れるたいきは、川になった道やツルツル滑る泥道に大騒ぎしながらも難なく上まで登りきる事が出来た。探検っぽくて楽しかったようだ。

 舗装路が始まる所にいつもの四駆が止まっていて、橇を引っ張っている牛の横でフランツさんが村人たちとおしゃべりしながら待っていてくれた。奥にいるのは来た時たいきの手を繋いでくれたお兄さんだ。たいきを見つけニコニコしてくれている。

 みんなにさよならをして車に乗りこむと、プリサンでの日々ももう終わり。ちょっと寂しいけど、午後にはシャンプーで頭を洗えると思うとちょっと嬉しいかも(^^)

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