赤道の先、バリンゴ湖へ
  ナイバシャ湖から今日の目的地、バリンゴ湖までは、予定表だと3時間ほどの道のりだ。たぶん昼過ぎには着けるだろう。アフリカにしてはそれほど遠くはない移動だ。

 今回バリンゴ湖を訪問先に入れた大きな理由に淡水湖だと言う事がある。
 このグレートリフトバレーの湖はほとんどがアルカリ性の水のソーダ湖。ソーダ湖にはティラピアのように偏った魚種しか生息できない。となると、水辺で生活しているカワセミ類にとってもあまり住みやすくないんじゃないだろうか、だとしたら淡水湖のバリンゴ湖に賭けるべきじゃないか、と思ったわけだ。

 ちなみにいままでいたナイバシャ湖も淡水湖、というかケニアの淡水湖はナイバシャとバリンゴだけらしい。(ビクトリア湖も淡水かな?)

 鳥に関しては、ヒメヤマセミはもちろん余裕だろうが、他にもカンムリカワセミとヒメショウビンの可能性があり、今回の遠征の核心部といってもいい。アンドリューにもう一度「ヒメショウビンも見られるんだよね」と聞くと「多分見られると思う」との返事。よっしゃ盛り上がってきたぞ〜

 ナイバシャ湖畔を離れ国道に戻ると、車はナクルの街を目指し北上を始めた。道は昨日より空いていて、車は100kmほどのスピードで快適に走ってゆく。空の雲は次第にとれて、青空が広がってきた。

 道は前方に見える湖に向かって緩やかに下ってゆく。アンドリューに聞くと、あの湖はエレメンタリーレイクと言うそうだ。ここもやはりソーダ湖らしい。日差しは強いが、窓からは涼しい風が吹き込んできてさわやかだ。

 この先ナクルの街をぬけてさらに北上し、赤道を越えた先にバリンゴ湖があるという。そう、ナイロビは南半球にあったのだ。時折埃っぽい集落が現れるほかは、周りは荒野がひろがるばかり。

 時々国道に併走している鉄道が交差する所があり、単調な移動にアクセントを作っている。線路を見ていると、これは何処まで続いているのかといつも気になるのだが、この鉄道はウガンダの方まで伸びているのかな。

 そのうち車はかなり大きな街中に入ってきた。ナクルだ。10年前に来た時は、ナイロビからナクル湖へ行って、そこからマサイマラに向かったので、ナクルの街ははじめてた。

 なのでナクルの街も昨日のマイマイウに毛の生えたような集落なんだろう、と思っていたのだが、実際はビルもあるし銀行もあり車があふれている立派な都市だった。
 こんなの見てしまうと、10年前にこの街のすぐ隣のナクル湖でみたライオンやシロサイは幻だったんだろうか?って気分になってくる。

 ナクルの街でガソリンを補給すると、車は町外れの坂を上りはじめた。ここからメインの国道をそれてバリンゴ湖へ向かうのだ。

 アフリカというイメージからナイロビから離れれば離れるほど秘境度は増して行くものだろうと思っていたので、ここから先のナクル以後はいつゾウが出てきてもおかしくないようなサバンナになるのだろうと想像していた。

 しかしそこには意外にも緑豊かできっちり整備された穀倉地帯が続いていた。まるでどこかの高原のようで、絶対ゾウなんかいなそうだ。ブッシュトイレするとこなんてどこにもなさそう。
 アフリカにもこんな面があるとはねえ、しかしこれじゃ秘境の面目形無しだな。

 あまり刺激的でない風景を眺めているうちにいつの間にか眠っていたらしい。アンドリューが車を路肩に止めたので目が覚める。どうしたの?と聞くとイークエーターだよ、と道路を横断している横断歩道のような線を指差した。イークエーター?赤道だ!

 車を降りるとみんなで赤道ラインの手前に並び、「いっせいのせ」で赤道を飛び越えた。
こんな風に自分の足で赤道をまたいだのは、たいきも僕もはじめてだ。いい経験したなあ。

 そのあと赤道の看板のところで記念撮影をしていると、奥の方の小屋で休んでいたおみやげ物売りのオバサンたちががわらわらと寄ってきた。やぱいなあ、なんか売りつけられそう;

 でもここで走って逃げるのも失礼なので、「もう用は済んだよ」的な雰囲気を出しつつひーことたいきは車のほうへ心持早足で避難していった。たいきなんか思いっきり緊張しちゃってガチガチになっている。ライオンに睨まれたトムソンガゼルもきっとあんな感じだな(^^;

 面白がってその姿を撮っていた僕はいつの間にか一人敵地に取り残され、お土産オバサンに取り囲まれていた。
 一応何が売ってるのか見てみると、卵に地球の絵が描いてあってそれに赤道のラインがひいてあるやつとか、マサイの定番ビーズのアクセサリーとか、よくわからない革紐とか、まああんまり欲しくないものばっかり。

 買え!買え!と口々にまくし立ててくる彼女らの強引な事といったらありゃしない。油断してると勝手にブレスレットを巻かれ代金を要求私的そうな勢いだ。
 「ヤスイ!ヤスイ!」を連発してるおばさんもいたので、ここで餌食になった日本人観光客も一人や二人じゃないんだろう(^^;
 でもこのときはマジで1シリングも持ってなかったので、こっちも「ノーマネー!」を連発し、何とか包囲網を突破。
 車の中の安全地帯まで撤収する事ができた。いや疲れたねえ。それじゃアンドリュー、先を急ごう。

 赤道の先はずっとなだらかな下り坂が続く。ナイロビの標高は1600m、それにたいしてバリンゴ湖は1000m弱とかなり低い。標高が下がるに連れ、風の中に熱気が増えてくるのがわかる。
 高原の雰囲気もなくなり、あたりはアフリカのイメージ通りのアカシヤと赤い土の大地が広がるようになってきた。これでこそ赤道直下、バリンゴに着いたらきっとビールが美味いだろう。

 道路沿いには所々掘っ立て小屋が並び、コーラのビンにつめた黄色っぽいジュースみたいなのを台の上に並べてを売っている。ありゃ飲んだら確実にお腹壊すな。
 アンドリューにあれって何のジュースなの?と聞くと、あれは蜂蜜なんだって。な〜んだ、ならあの状態も納得行くな。 ここいら辺はアカシアから採れる蜂蜜の名産地で、とっても美味しいよ、と言っていた。
 ああしてお土産用に売っているのだそうだが、アフリカに蜂蜜ってのもあまりしっくりこないな。

 バリンゴ湖の手前にもう一つボゴリア湖という湖がある。このふたつの湖は距離も近く、2つで1セットのような紹介のされ方をするが、バリンゴ湖の淡水に対してボゴリア湖はアルカリ性の塩水のソーダ湖だ。このソーダ湖、フラミンゴには人気があるらしくて、ここではその大群が見られるという。

 車はそのボゴリア湖への分岐点を通り過ぎた。ボゴリア湖には間欠泉もあるらしく、帰りにちょっと寄ってけないか聞くと、なんだか結構高い入場料を取られるらしいのでやめにしておいた。 

 ボゴリアまで来たらバリンゴもあと一息。しかしここに来て道路の舗装状態が一気に悪くなってきた。いたるところに大穴が開いていて車体はバウンドしまくり。
 ボゴリア湖だけにボコボコだね、なんて行ってると舌を噛んでしまいそうだ(^^;

 ボコボコの道に続き今度は川の増水で道路が冠水してしまっている場所が現れた。雨季でもないのに結構水量が豊富だ。 流れの下の道路は一部流されていて、残っているのは車1台がやっと通れるスペースだけらしい。

 向こうからやってきたコカコーラのトラックが渡り終えるのを見届けると今度はうちらの番。
アンドリューがそこらで遊んでいた地元の子供にチップをあげて道案内してくれるように頼み慎重に渡河開始。
窓から見下ろすと、水中で明らかに道路が崩れていて大きな穴があいているのが見える。やばそ〜

さっきの子供は川の中に入り、「ちょい右」 「そう、ちょいみぎ」 「はぁーい。そこでまっすぐ!」と誘導してくれる。
アンドリューはその声に導かれるように慎重に車を進め、「4、3、2、1、ゼロー!」の掛け声と共に(ないない^^;)緊張の中無事川を渡り終える事ができた。ありがとう子供!
       

 川を越えた先の左側は、韮崎あたりを思い出させる崖がずっと続いていた。バリンゴのアクティビティにバードウォークと言うのがあって、そのとき崖の所で猛禽が見られるとあったが、ここらへんがその崖だろうか。

 そしてついにバリンゴ湖の水面が見えてきた。あそこにカンムリカワセミとヒメショウビンがいるんだ!

 しばらく行くと公園入り口のゲートが現れた。
ここでアンドリューが入園手続きをしに行ったのだが、なんか係官ともめているようだ大丈夫だろうか?

 車の周りにも人が集まってきた。またみやげ物売りとかだったら嫌だなあと思っていたら、ニコッと笑い「Jumbo!」と話 しかけてきた。なんか公園のスタッフみたいだ。疑ってすみません〜。
 
そのうちアンドリューが戻ってきたので「なんかトラブル?」と聞くと、特になんでもなく。ただ世間話をしていただけらしい。ここいら辺の人はいまいち表情が読めないし顔が怖い。それに早口でまくし立てるからなんか喧嘩してるみたいなんだよな。

 そしてそれから数分後、やっと今日の宿、レイクバリンゴサファリクラブのゲートが見えてきた。
 さて、どんなところなんだろう。楽しみだ〜

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