チャガシラハチクイポイントを後にして頂上への道をゆっくり走っていると、道路脇の森の中から鳥の声が聞こえてきた。 ナンさんは慌ててドライバーに車を止めさせる。
「何?」と聞くと「Blue pitta!」
!!!!ルリヤイロチョウだ!!!!!
慌ててサンダルを靴下+スニーカーに履き替えたナンさんはズボンの裾を靴下の中にたくし込むと、自分のカメラを手にして車を降りた。きっとヒル対策なんだろう。ぼくも靴下に裾をいれて車から降りカメラを三脚にセットする。
ナンさんは声のする方に近づくと、携帯に録音しているルリヤイロチョウの声でコールバックをはじめた。
声はすぐそばから聞こえてくるのだが、どこにいるのかはいまいちわからない。
道路際は樹木の密度が濃くて壁のようになっているので全然見通しが聞かないため、一歩森の中に足を踏み入れる。
そしてその場でじっとしていると、時々林床をすばやく走り抜ける影がみえた。あれがルリヤイロチョウのようだ。
中々はっきりとは姿を見せてくれないが、ナンさんのコールバックには明らかに反応しているようで、うちらの周りを動き回っている。
そのうち僕の所から葉っぱの隙間を通してかろうじて見える木の根元に鳥が止まった。
カメラを向けAF‐ON。ファインダーに浮かび上がってきたのは・・・・ルリヤイロチョウだ!!!
今までの鳥撮り人生ははじめてはっきり見たヤイロチョウ!手が震えてしまう。
しかしSSはISO400で1/8、気合入れていかなければ!ピントを合わせなおして慎重にシャッターを切った・・・
やった〜!ルリヤイロチョウゲット!押さえでISOを800にあげてさらに撮影。
幸いヤイロチョウはしばらくそこで鳴き続けていてくれたので、ゆっくりとその姿を見ることができた。
羽の青が鮮やかだが後頭部のオレンジもすごく綺麗だ。
一方ガイドのナンさんはルリヤイロチョウが何処にいるのかわからないらしく、必死でコールバックしながら僕の撮っているあたりを双眼鏡でチェックしている。ほんとにここからのピンポイントでしか見えないようだ。
・・・・・さらにカメラを首から提げた彼は明らかに撮りたがっていた(汗)
それじゃ僕は一応撮ることができたので「ここからだったら見えるから、僕のレンズにカメラを付けて撮ってみる?」というと、待ってましたとばかりに自分の300mmをカメラから取り外して僕に押し付け、自分の40Dを僕のロクヨンに取り付けた。しかしやはりというかなんというか、ナンさんがファインダーを覗いたとき、ルリヤイロチョウは既にそこにはいなかった・・まあそんなもんだよ。
その後、僕のロクヨンは諦めの付かないナンさんに拉致られてしまい、彼は片手の携帯でコールバックしながらずんずん森の中を進んでいく。普段こんなに重いレンズや三脚は持ちなれていないのだろう、なんかフラフラしていて見ているこっちもヒヤヒヤもんだ。しかしこの状況で返してとはいえないもんなあ(^^;
結局この後ナンさんに追い立てられたヤイロチョウは森深くに入ってしまい、声も聞こえなくなってしまった。
ナンさん残念だったねえ。でもあんたはカオヤイに住んでるんだから、まだこの先チャンスもあるでしょう。泣くなナンさん、僕も日本じゃこんなことしょっちゅうだって。
その後急にやる気をなくしたナンさんはロクヨンを僕に返し、道路の方に戻っていった。と言うわけで僕はそこからロクヨンを運び出す羽目になった。これじゃどっちがガイドかわからないぞ・・・
それでもルリヤイロチョウの成果にホクホク気分で車まで戻ると、ナンさんが靴を脱いでなんかやっている。見ると靴下に蛭が・・・それを無造作につまんで、車の外に放り投げていた。もしや僕も?!と思い靴を脱いでみると、こちらの靴下の上にも2cmほどの蛭が〜! あわててナンさんにとってもらったが、靴下にズボンのすそを入れておいて良かったよ。
さあ、あとはカザリショウビンさえ撮れれば完璧だ。次に行って見よう!
道はだんだん勾配がきつくなり、峠道の様相になってきた。高度が上がるに連れて、空気もひんやりしてきた。
いくつめかのカーブでナンさんは車を路肩に寄せ車から降りた。そしてそこから始まっているトレイルの入り口に行き、こっちを手招きする。何がいるんだろ?
ナンさんのところに行くと、彼はトレイルをちょっと入った所にある枯れ木を指差し「Trogon」と教えてくれた、が僕には何のことやら良くわからない。
取り合えずロクヨンのファインダーに入れて覗いてみると、そこにいたのはズアカキヌバネドリ・・・らしいのだが、あいにく顔がちょっと見えるだけ。ナンさんは「午後になったら光の具合が良くなるから、そうしたらまた来よう」といってこの場所を後にした。
そこからもうちょっと行ったところがカオヤイ国立公園の最高地点。ここは軍隊の施設になっているようで、ゲートがあって自動小銃を持った兵士が警備をしている。といってもダベっているだけのようだったが
一方、ここの見張り小屋?は売店もかねているようで、中の兵士は菓子パンを売っていたりしてこちらもかなりユルい感じだ。ナンさんが「どのパンがいい?」というので「TUNA」と書いてあるのを買ってもらう。
ここはカオヤイ最高地点だけあって、併設されている展望台からの景色は中々だ。時々猛禽やサイチョウの飛ぶ姿が見れるらしい。眼下の森から「ココココ・・・・」と言う声が聞こえてくるので何か聞くと「Berbet」と興味なさそうに一言。ここじゃ普通種なんだろう。でもどんなBerbetなのか見て見たいぞ〜
展望台のすぐ下にはシマアカモズが1羽、よく見えるところに止まっていた。
アサギマダラっぽい蝶も飛んでいたが、ボディーが黄橙色で日本のものとは大分イメージが違いかなり毒々しい。
ここで運転手さんがコーヒーを入れてくれたので、さっきのツナパンと一緒に朝ごはん代わりにする。
が一口パンをかじってびっくり。なんかすっごく甘いのだ。ピーナッツバターとツナを一緒に挟んだような味だ。でもちょっと癖になりそうな感じでもあり、意外とそんなにまずいものではなかった。
朝ごはんを食べていると駐車スペースにワンボックスカーが入ってきて、バーダーらしき集団が下りてきた。どうも日本人グループみたいだ。
ナンさんはそのグループのガイドさんとは顔見知りらしく、さっき僕がルリヤイロチョウを撮ったことを自分のことのように自慢している。実はなかなかいい人なのか?(^^;
その流れでそのガイドさんにルリヤイロチョウの画像を見せていると、このグループの引率らしい青年が「Where
are you from」と話しかけてきた。そりゃこんなところで日本人に会うとはお互い思わないもんねえ。もちろん「日本人です!」と日本語で答える。
彼とカザリショウビンやミツユビカワセミのこととか話していると「海外のカワセミが好きならRICKさんって知ってます?」と聞いてきた。へ〜?なんでRICKさんのこと知ってるの?と聞いたら、彼が去年RICKさんたちがボルネオに行くときお世話になったと言う田仲さんその人だったのだ。
いまは会社が変わったそうだがタイにもよく来ているらしい。
ここであったのも何かの縁だ。記念に一緒に写真を撮らせてもらった。
ちなみに田仲さんの話だと、ここでカザリショウビンを見るのはかなり難しいんじゃないかと言う事だった。う〜ん・・・
ここでうちらは一足先に山を降りることになり、田仲さんグループに別れを告げて走り出す。するとすぐに前方の電線に小型の猛禽が止まっているのをナンさんが見つけた。
しばらく撮影をしていると、後ろから田仲さんグループもやってきて、一緒に観察。田仲さんの持っていた図鑑のよると、ふつうのツミの若みたいだ。
さらにちょっと進んだ所ではカンムリワシがすぐそばに止っていた。石垣島のと同じように警戒心は少ないようだ。
後半は猛禽づいているなあ。
しかしこのあとは鳥の姿もあまり見かけなくなってきた。一応昼には一度ホテルに帰ることになっており残り時間も少なくなってきたので一気に朝ダメだったカザリショウビンポイントを目指すことにする。
そして到着したカザリポイントだが、今回もコールバックに対する反応はない。
それじゃあちょっとトレイルに入ってみようか。
ナンさんは片手にマイカメラ、片手に携帯を持って、辺りをうかがいながらそ〜っと森の中を進んでいく。
あたりは板状の幹の高木が目立ち、ちょっとタンココと雰囲気が似ている。カワセミの好きそうな環境っぽい。
しかし静まり返った森の中には、ナンさんの携帯から流れるカザリショウビンの声が響くばかり・・・
結局何も現れないまま車まで戻ってくる事となった。残念。
でもまあまだ初日だし、明日も明後日あるさ、と言う気分でカザリポイントを後にした。
今日はルリヤイロチョウが見られただけでも十分だしね。
ここで時計を見るともう既に午後12時30分、やばい、かなり遅ちゃったなあ・・・
このあとはノンストップで山を降り、公園ゲートを通過。
そしてホテルにたどり着いたのが1時過ぎ、まあ何とかギリギリセーフかな。
夕方からコウモリ洞窟を見に行く事になっているので、また4時に迎えに来てくれるよう約束をしてナンさんとわかれる。
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