ゾウを訪ねて三千里

 滝の駐車場を出ると、ゆっくりと鳥を探しながらさっきのブラインドのキャンプ場に戻る。
 ここでナンさんはブラインドを片付けに行った。一緒に手伝いに行こうかと聞くとここで待っていろというので、僕はキャンプ場の周辺で鳥を探すことにする。

 木の枝から枝へと忙しく飛び回っているのはアオハナドリ(Plain Flowerpecker)。

 去年のスラウェシ以来のキノボリトカゲも木から木へと飛び回っていた。

 一方ひーことたいきは荷台に寝転び昼寝モード。朝も早かったしお腹もいっぱいだし、木陰のそよ風も気持ちいい。昼寝には最高の環境だ。

 そのうちさっきレストランにいたグループがやってきて、一本の木を取り囲み何かを撮りはじめた。
 一脚おじさんがいたので「何がいるんですか?」と聞くとShama(アカハラシキチョウ)だそうだ。なんとなくその集団に混じり眺めていると、結構いいところに出てきてくれた。せっかくなので一応撮影しておく。

 しばらくするとブラインドを持ったナンさんが戻ってきたので、「そういえばさっきブラインドに入っているとき、頭がオレンジで体がブルーグレーの綺麗な鳥がいたんだけど、なんなんだろう?」というと「これのこと?」と言って自分の40Dの液晶を見せた。「そうそう、この鳥。いつ撮ったの?」「今ブラインドを片付けに行ったとき」と言ってニンマリ・・・・あんたそれでもガイドか!!僕も撮りたかったのに〜〜(T T)

 あの鳥はOrange-headed Thrush、和名はオレンジジツグミ というそうだ。ほんと綺麗な鳥だったよなあ、撮りたかったなあ・・・とグダグダ言っていると、「それじゃ明日また来よう」と提案してきたので許してやる事にする(^^;

 再び車に乗り込もうとすると、なんか見たことがある車がやってきた。ああ、今朝オオサイチョウの所にいた車じゃないか。となると・・・出た〜恐怖のおばちゃん!たいきを見かけて「Oh!Taiki〜♪」と下りてきた。たいきはすっかり萎縮してしまい半泣きだ(^^;
 なので恐怖のおばちゃんには申し訳なかったが、逃げるようにその場を後にしたのだった。

 さてこれから何処へ向かうのかわからないが、ちゃんとカザリショウビン探してね。Pittaももう一回見たいよなあ・・・

 しばらく何事もなく進んでいたのだが、一台の対向車のドライバーがすれちがいざま興奮た様子でナンさんに何か言うと、ナンさんは急に車をUターンさせスピードを上げた。なんだなんだ?明らかに何かを目指しているようだ。この展開、もしかしてゾウかな?

 そして再び道路にゾウの糞発見。ここがあのドライバーの言っていたポイントだろうか。結構新鮮なブツだったが、ゾウは既に森の中に入ってしまったようで、その姿を見ることはできなかった。

 その後ナンさんはすっかりゾウモードに入ってしまったようで、サバンナのような草原、岩肌の露出した空き地、大きな水溜りなど、めぼしいゾウポイントをあちらこちら走り回る。

 まあゾウは見ては見たいけど、でもそれよりもうちょっと気合を入れてカザリショウビンを探して欲しいなあ・・・

 たいきは車の揺れにだんだん眠くなってきてしまったようで、最初うつらうつらしていたのだが、そのうちベンチに横になり完全に寝入ってしまった。朝も早かったからねえ。

 しかしこうやってずっと荷台で揺られていると、なんか車で旅している難民のような気分になってくる。それはそれで悪い気分ではないな。

 車は草原から森へ、森から草原へとカオヤイの中を走り続け、午後の時間はどんどん過ぎていった。
最終的には公園核心部から30分ほどの所にある川まで到着。

 長い事すわりっぱなしで疲れたので、寝ているたいきはほっといて車から降りて一休みする。
橋の欄干から川を眺めていると水面を移動していく波紋が見えたので、もしかしてカワウソかもと期待したのだが、
正体はミズオオトカゲだった。

ここで車はUターン。収穫がないまま今来た道を戻り始めた。なんとなく車内にはあきらめムードが漂っている。

 しかしこの直後、道路わきの土がむき出しになった荒地で待望のゾウ発見! 
 あわてて眠っているたいきをたたき起こすと、いきなり目の前にゾウがいてびっくりしていた。

 泥と水でマダラ模様になったゾウは、大岩が転がっているっような佇まいですっかりそこの風景に溶け込んでいた。

はじめて見るアジアゾウだが、開けたところにいるせいか、ちっとも違和感がない。
というか、このシチュエーションはちょっと動物園っぽいかも・・・

 一方、長いドライブの末やっと見つけたゾウにたいきとひーこは二人とも大興奮。たいきはゾウを、ひーこはゾウを撮っている僕とたいきを撮りまくっていた。

 このあとゾウは逃げるように森の中に入っていった。やっぱり人間に見られていると鬱陶しいんだろうな。
こういうところ、野生っぽくていいね。

 そこでうちらはゾウの進んでいった方へ車で先回りして、ゾウの通り道で待ち伏せすることにする。

 車から降りじっと耳をそばだてていると、森の中からかすかに小枝の折れる音と葉ずれの音が聞こえてきた。これがゾウの歩く音だそうだ。もっと派手にバキバキ樹を踏み倒し、地響きをたてて、パオパオ鳴きながらやってくるものだと思っていたのに、こんなに密やかに歩くなんて意外だなあ・・・

 しばらくここで待ったものの、結局ゾウがこの場所に現れることはなかった。やはり野生動物、人の気配を嫌ってルートを変えてしまったんだろう。しかしさっき姿を見たときよりより近く野生のゾウの気配を感じる事ができた気がする。

 それにしてもひーことたいきが一緒の時に野生のゾウが見られて良かったよ。二人は鳥なんてあまり興味ないだろうから、これが今回のカオヤイで一番の収穫だったに違いない。

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