バリバラットのジャワショウビン
  翌朝、4時ごろにどこからか聞こえてくる音楽で目が覚める。どうもコーランとかを読んでいるのをスピーカーで流しているみたいだ。こんな朝早く、というか真夜中からムスリムの人たちも大変だねえ。でもこんなやかましくしてヒンドゥーの人たちから苦情は出ないのだろうか?

 6時になりまだ薄暗い中フロントへ向かうと、今日は時間通りYudiさんが愛車キジャンの前でニコニコしながら待っていてくれた。

 それじゃ出発!早朝の国道を走りながら、今朝のスケジュールの打ち合わせをした結果、セアカミツユビやキマユシマは日が高くならないと撮影は難しいだろうから、まずはジャワショウビンを見に行こうということになり、ギリマヌクを回り込んで島の南側に出た。

 車中でYudiさんと色々話したが、いまYudiさんはバリスターリングを増やすため人工孵化させて、そのペアを色々な村の村人に上げるという計画を立てているらしい。
 鳥を飼うのが好きなバリ人の心を掴む作戦で、交換条件としてそのペアが子供を生んだら1羽目はそのまま飼っていいけれど、2羽目からは野生に放すという約束をするんだそうだ。

 それとともにそういうバリスターリングが暮らしていける天然林を守る事の重要性を説いていく。そういう作戦らしい。
 ここらへんもお金になる作物を育てるためにどんどん天然林が伐採されていて、Yudiさんはそれに危機感を持っているそうだ。

 この件にJAICAが協力していて、バリスターリングの人工孵化の実績が高い横浜のズーラシアに、今年の秋研修を兼ねて行けるかも知れないとのこと。そのときは絶対声をかけてね。僕が日本のカワセミをガイドするから!と約束した。

 ミンピを出てから30分ほど走ったところでわき道に入ると小さな村があった。

 その先が目的のライステラス。現地に着くころ、椰子の木の向こうに朝日が昇ってきた。

 ここで車を降りてジャワショウビンを探すようだ。
 バリ西部にはライステラスが少なくて、ジャワショウビンもいるにはいるのだが、
森の中にいるため今までは見つけるのが難しかったそうだ。
そこでYudiさんが探したのがこの場所。

 ここにはレンジャーとして地元の子供たちに野鳥の保護についての話をしに来ることもあるそうで、
村人たちとも顔見知りのようだ。通りがかった人たちがみんな声をかけてくる。

ジャワショウビンはよく畑の真ん中の東屋にやってくるらしい。

 しばらくすると「ギャギャギャ」というやかましい声がきこえてきた!Yudiさんが「あそこあそこ!」と指差す遠くの東屋を見ると、確かに屋根の上にジャワショウビンが止まっていた。しかしちょっと距離が遠すぎだなあ・・・

 そこに道の向こうから村人の集団がやってきた。今日は村総出で道端の草刈をする日だったようだ。それに驚いた訳でもないだろうが、ジャワショウビンはギャギャギャギャ鳴きながら、椰子の林の中に飛んでいってしまった。

 草刈が終わるまでこの場所は期待できそうもないので、一旦車に戻り小移動をする。

 今度は教会みたいな建物の前に車を止め、その敷地内に入っていくYudiさん。

 勝手に入っちゃってていいの?と言ったら知りあいのところだから大丈夫だという。建物の裏手に回りこむと、ふたたびさっきのライステラスが見渡せた。 ここものどかな感じでいい場所だ。

 上空をジャワアカガシラサギが飛んでゆく。

時折聞こえてくるギャーギャーと言う声に身構えるが、あれはジャワショウビンじゃなくてナンヨウショウビンの声なんだそうだ。ジャワショウビンの声はもっと声と声の間隔が短いと教えてもらう。なるほどねえ。

はるか彼方の木で何かが囀っているのに反応したYudiさん。スコープにその鳥を入れて見せてくれた。
Grass−bird(オニセッカ)だ。前にギリマヌクで見たことあるね。でもまともな画像を得るにはちょっと遠すぎ・・・

しかしここで待っていてもジャワショウビンは一向に現れない。
どうやら草刈も終わったようなのでさっきの場所に戻ってみようとYudiさん。
そしてさっきの場所に着くと、道端に立っている小学校に潜り込んだ。またまた大丈夫なの?と聞くと、
今日はお休みの日だし、いつも授業を教えに来ている所だから大丈夫なんだって。Yudiさん顔が広いねえ。

 
この学校はさっきジャワショウビンが止まっていた小屋の近くまで塀が続いているので、うまくすれば結構近づけるかもしれない。というわけでカメラだけ東屋の近くに設置して、僕らは庭の片隅に立っている東屋に座り込んで、Yudiさんが持ってきてくれたクッキーとミネラルウォーターで腹ごしらえをしながらしばらく待ってみることにする。

しばらくすると例のギャギャギャ声と共にジャワショウビンが小屋にやってきた、しかも2羽!緊張が走る。

そっとカメラの所に行こうとすると、ジャワショウビンは小屋からこっちへ向かって飛んできて、学校の端に生えている椰子の上に止まっててしまった。近いけれどここからじゃ椰子の葉がじゃまでどこにいるのか判らないよ〜

 しかたないのでその場で状況が改善させるのを待ったのだが、ふたたびギャギャギャ声と共に飛び立ったジャワショウビンは、うちらの上空を飛び越え、道路の向こうへ消えていった。

 でもきっとまた戻ってくるよ!とのYudiさんの言葉を信じ再び東屋でクッキーを食べながら待機する。
 カメラはさっきよりさらに小屋に近いところに移動させた。

 Yudiさんの「自分のスコープが欲しいんだけど、どうしたら安く買えるか」と言う相談に乗っていると、再びジャワショウビンが戻ってきてくれた。再び二人に緊張が走る。

 とりあえずYudiさんにはここから指示を出してもらう事にして、建物に沿って中腰になりゆっくりゆっくりとカメラのほうに向かう。ジャワショウビンはまだ飛んでいないみたいだ。

 ある程度の距離まで近づいたところで、今度はしゃがみ歩きと四つんばい歩きを駆使しながらなんとかカメラの所までたどり着いた。ここからはジャワショウビンは見えないが、Yudiさんを見るとOKサインを出している。まだいるみたいだ。

 レンズの後ろに隠れるようにしてそっと顔を出すと、こちらにまだ気付いていないらしいジャワショウビンの姿が目に入った。ドキドキしながらもゆっくりとレンズを動かし、ファインダーに入れてAF−ON!ファインダーの中にジャワショウビンの姿が浮かび上がった。すかさずシャッターを切って連写!・・・なんかSSがやけに早いと思ったら、ISOが12800になっているじゃん!

 あわてて感度を落とそうとしたが、シャッター音で気付かれてしまったようで、ジャワショウビンはこっちをちょっと見つめるとギャギャギャギャ言いながら椰子林の方へ飛んでいってしまった。

 まあ結構大きく撮れたからOKかな。まだこの先ウブドもあるし、これからキマユシマヤイロチョウもセアカミツユビも撮らなきゃいけないからここでそうそう粘るわけにも行かないのだ。

 Yudiさんありがと。それじゃ次のポイントに移動しよう!

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