自力でジャワショウ、そして惨劇
 この日の朝も昨日までの習慣で午前4時に目がさめる。旅行に来てるとほんとに目覚めがいいんだよな。われながら不思議だ。

 今日は調子の悪い7Dは置いていく事にして、マク4とロクヨン、12−24mmをリュックにいれ、首からIXY1000を提げて6時前に部屋を出た。あたりはまだ日の出前の静寂に包まれている。


 今回はケ〇ゥさんがいないので(^^;ジャワショウ探しは自力でやらなくちゃならない。でもウブドはもう大分勝手が分かっているからそれはそれで楽しそうだ。

 フロントに行くと昨日頼んでおいたバイクの用意が出来ていた。
今回借りたのはスクータータイプの110cc、ここらへんを回るには十分だ。

 ランタ島での苦労を思い出し一応ガソリンの残量をチェックすると、案の定ほぼ空っぽだ。

 やばいとこだったよ。フロントの兄ちゃんに文句を言ってもう1台の方に変えてもらう。こちらは半分くらいは入っていそうだ。

 それじゃヘルメットを被り出発だ!

早朝のモンキーフォレスト通りは人影もなくひっそりとしている。
ひんやりとした空気が気持ちいい。

  そしてまず目指したのは、まだたいきが赤ちゃんの頃にバリに来たときジャワショウビンを初めて撮ったピタマハの前の水田。

 しかしいざ行ってみるとそこら辺はもう建物が立ち並び、道路から見える範囲では水田なんてなくなっていた。10年の歳月を思い知らされる。

 次は前回ケトゥさんに連れて行ってもらったライステラスに行って見ようと思い来た道を引き返す。

 通りは早くも通勤通学の車やバイクが増えてきた。まあ学校が始まるのが朝7時からなんだからこんなもんか。

 何度か道を間違えた末、やっとこの前のライステラスへの道に出たが、そこから先は車が通れない細い道がずっとライステラスの畦道に繋がっている。ここらへんにバイクを止めていくべきかどうか悩んでいると、その道からおばさんが出てきた。「スラマッ パギ」と挨拶すると「バイクで入っていいのよ」みたいなジェスチャーをしてくれたので「トリマカシー」とお礼を言ってそのままバイクを乗り入れた。

 現地の人の邪魔にならないようにゆっくり畦道を登っていく途中、すれ違ったり追い抜いたりした人たちに「スラマッ パギ」と挨拶をすると、笑顔で「パギ〜」と返事をしてくれる。みんな優しいなあ。

 しばらく登っていくとバイクを止められそうなスベースがあったので、ここに駐輪して機材をセット。あとは歩いて登る事にする。

 田んぼの状況だが、今回は時期的なものか収穫間際の所が多いようだ。
 前回ケトゥさんに教えてもらった話だと、こういう場所は既に水が抜かれているので、田んぼに住む小魚やカエルを餌にしているジャワショウにはちょっと厳しい状況のようだ。 確かにいるのは朝露に濡れた稲穂に群がるギンハラやヘキチョウばかり。

 ちょっとでも水が残っていそうな水田を目指し、ライステラスの中の道を登って行く。
 ロクヨンと三脚を担いで歩き続けるのにちょっと疲れたのでバトゥカル山が見える場所で風景を撮っていると、さっきバイクで追い抜いたおじさんが登ってきた。

 もういちど「スラマッ パギ」と挨拶すると「おはようございます」と日本語の返事が帰ってきた。この人日本人だったのか。でもなんだか観光客には見えないなあ。

 しばらくその場で米の育成状況とかの立ち話をしていたが、良ければこの先谷底に降りて隣のライステラスへ向かう道を教えてくれるとおっしゃってくれたので、お言葉に甘えて案内してもらうことにした。
話を聞くと、なんとウブドに住んで30年という。そりゃ観光客には見えないわけだ。

 すれ違う現地の人たちにも、にこやかに挨拶するでもなく、たまにボソッと一言しゃべる位のところがまた現地在住っぽい。比べちゃうと僕なんか観光客丸出しだよな・・・

 そして彼と歩きだしてすぐにジャワショウビン登場!もしや彼は幸運の女神ならぬ幸運のおじさんか?
止まっている場所はいまいちだったが、結構近くで撮れたのでちょっと肩の荷が下りた。
Sさんに「おかげさまでジャワショウビンが撮れました!」と画像を再生して見せると「背景がいまいちですねえ」と中々手厳しい(^^;

 ジャワショウビンのちょっと先に谷底に下りる小道があった。こんなの教えてもらわなければ絶対気が付かないだろう。

 谷底は綺麗な川沿いに道が続き、まるでナウシカの世界に迷い込んだようだ。そんな自然の流れの中に、苔むしたレンガ造りのトンネルなんかがあったりして、古代文明の廃墟を連想させる。

 Sさんの話だと、この川は昨日通ってきたブドゥグルの湖から流れ出ているそうだ。バリ島の中心部の高い山の辺りは雨季乾季を通して常に雨が振ることが多いので、湖の水が枯れることはないらしい。昨日ブドゥグルを通ってきた身にはとても説得力のある話だ。

 そこの水をバリの人達が水路を整備して、すっとここまで流してきているのだと言う。自然の力だけを利用して、バリ全土を潤しているこのシステム、これがほんとのエコだよな。

 水路に沿ってしばらく歩き再び隣のライステラスまで登ると、Sさんはそこの畦道を王宮通りまで下るという。彼は大通りにバイクを止めてあるそうだ。

 一緒に付いて行くとなると僕はまたさっきのライステラスまで戻ってバイクの場所まで上らなくてはならない。ここは来た道を引き返そうかとも思ったが、とりあえず目標のジャワショウも撮れたので、多少気持ちの余裕も出てきた。

次回のロケハンにもなるから良いかと思い、この際ご一緒させてもらうことにした。

 しかしSさん、70歳を過ぎているというのにえらい健脚だ。一度も立ち止まることなくひたすら歩き続けられるので、
ロクヨンを担いだ僕はついていくのが精一杯。

ライステラスを下ってゆくと、畦道はいつの間にか舗装された道に変わり、
さらにお店がちらほら見えるようになってきた。

 そしてやっと王宮通りのロータスカフェに到着。もうフラフラだ。
Sさんはここで蓮の様子を見るのを日課にしているという事で休憩タイム。疲れた〜。
確かに舞台の前に広がる蓮池は見事なものだ。
夜になるとこの舞台でのバロンダンスなどを眺めながら食事が出来るそうで、一度来て見たいなあ。

 ロータスカフェを後にして最初のライステラスへバイクを取りに戻るため王宮通りを歩いている時だ。
 肩に担いでいたロクヨンが何かに引っ張られるような気がした。そのあと



ガッシャーン!


という耳をふさぎたくなるような音がして肩が急に軽くなった。
ああ・・・思い出したくもないが思い出してしまうあの光景・・・


真っ青になって振り返ると、そこにはレンズとボディーがバラバラになったロクヨンとMk4が転がっていたのだ・・・


ひえええ〜〜〜〜


 と内心動揺しまくりだが、Sさんの手前、平静を装うことに全力を挙げつつ転がったロクヨンを見ると、
なんかさっきまで間に挟まっていたテレコンがないような・・・

 うう、バラバラの残骸が転がっている・・・さらにどの部品だかわからないがガラスの破片も散らばっていた。
とりあえずロクヨン本体のレンズは大丈夫そうだが・・・どこの部品だ?

 Mk4はどうだろうと思いファインダーをのぞくと、中央にあるはずのAFポイントがはるか右上にある。
これは間違えてそっちのAFポイントを選択しちゃったんだな、と思い中央に復帰させる・・・
がAFポイントは右上から動かない・・・・どうしちゃったんだ〜(TT)

 ファインダーから目を離し、中をのぞいてみると・・・
なんかファインダーの真ん中にヒビが入ってるんですが・・・orz


 Sさんが心配そうに「大丈夫ですか・・・」と聞いてきたので、「あ、あのりょ、旅行保険に入ってるから大丈夫です・・・ハハハ」と答えると、この騒ぎを聞きつけやってきた現地人の新聞売りが「ほけん」と言う言葉を理解したらしく、
ニコニコと「モウカッタカ?モウカッタネ!」と話しかけてきた。
思わず「もうかってねーよ!」と怒鳴り返すが、心の中はもう真っ白・・・

Sさんの「今日はもう撮影は無理ですね・・・」の言葉を期にリュックに残骸を詰めて立ち上がった。
そのあと近くにバイクを止めてあるというSさんと別れ、重い足と重い心を引きずりながら
一人ライステラスの道をバイクの所まで登っていった。

汗だくの半ば放心状態でバイクの所までたどり着くと、シートにまたがってセルのボタンを押す・・・
う〜、うんともすんとも言わない。バッテリー上がってるよ〜orz。どこまでついてないんだ・・・

 このまま宿までバイクを押して歩いていかなきゃならないのか、と泣きたくなったが、
キックが付いていたので試してみると不幸中の幸いかエンジンはちゃんと掛かってくれた。
まったくなんでバッテリーが上がってたんだ?別にライト消し忘れたわけじゃないしなあ・・・

釈然としないままバイクにまたがり畦道を下り始める。そしてカーブでブレーキレバーを握るとなんか手がしびれてきた。
この感じは感電?どうも漏電しているようだ。だからバッテリー上がったんだな、と納得・・・

しかし今朝は踏んだり蹴ったりだよ(泣)もしかしてケトゥさんの祟りか?

感電を我慢して、できるだけブレーキは使わないようにして大通りに出ると
もう身も心もボロボロになって宿に戻った・・・
 

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