白熱!アカヒゲバトル
 翌朝、まだ薄暗いうちに起き出して昨日アカヒゲが入っていた植え込みを覗いてみたが、もう鳥の気配はなくなっていた。裏山からはアカヒゲのさえずりが聞こえてくるので、もう出て行ってしまったのかな。

 それではでっかい車で出発!今日もいい天気になりそうだ。

 まず向かうのは昨日ヤンバルクイナを見たあたり。
 現地に近づき車のスピードを落とし,モーター走行でそっと走っていくと、路肩を歩くヤンバルクイナ発見!慌てて助手席のロクヨンを構えようとするが、天井が低くってフードが引っかかってしまいなかなか方向転換させられない。まったく側は無駄に大きいのに中はこの狭さ、鳥撮りには使い勝手が悪すぎだ。

お陰でレンズを窓から出せた時には既にヤンバルクイナは藪の中、半分草に埋もれてこっちの様子を伺っているという状態になってしまっていた。

 結構のんびり屋のヤンバルクイナだったのに残念だ。

 その後も何度か遭遇はあったのだが、いかんせんレンズでかすぎ、車内狭すぎで撮影体制に入るのに時間がかかり過ぎことごとく失敗した。こりゃシグマの50-500mmをD4につけて撮ったほうがいい結果になるかもしれないな。

 あまりヤンバルクイナにかまけていると何にも撮れずに時間切れになってしまいそうなので、気分を変えてアカヒゲポイントへ移動。すると今日も路上でメスが餌をつついていた。

 昨日のハゲオスを期待してここでしばらく待機しようと車を路肩に寄せて駐車。こんな時にもこの大柄な車体は気を使う。ヘタに停めたら対向車が来てもすれ違えないから、できるだけ道幅の広い所を探さなきゃならないのだ。

 車から降りて三脚をセットしていると、ガードレールに巨大ナメクジ発見。僕の指くらいある。さすがヤンバル、こんなとこも秘境感があるねえ。

 しかししばらく待ってみたものの、谷底のほうから声が聞こえるだけで昨日のオスは出てこない。限られた朝撮りの時間、あまり粘るわけにも行かないので車に戻り、林道を走りながら鳥を探す事にした。

 今日も林道はどんどん細くなり、草がキュルキュルと車体をこする。こりゃ絶対擦り傷出来てるよ、返車するときいやだなあ・・・

 窓を全開にして耳を凝らし林道を登ってゆくと、アカヒゲの「ビッ ビッ」が聞こえてきたので車を止める。すると後方の木の枝にアカヒゲが止まった!いい黒ヒゲだ!

 またもや必死でレンズを取り回してシャッターを切るが、体が安定しない。車内では普通シートや窓枠を利用してレンズを支持するが、それぞれの位置が微妙に遠くてほぼ手持ち状態を強いられた。ほんとに撮りにくい車内だよ。

 この黒ヒゲに対抗しているらしきヨダレカケをつけた若ヒゲも登場。こちらのほうが黒ヒゲより警戒心は少なくて、結構そばまで寄ってきてくれた。

 喉の産毛ももうすぐ抜けきりそうだが、出来たらもうちょっと早く抜けておいて欲しかったな。これが10月くらいになるとなりだけは立派だが、妙に愛想のいい黒ヒゲになってくるんだろう。

 この時期、独立した若鳥が加わって、森の中は縄張り争いで大騒ぎのようで、その後もいたるところから「ビッ ビッ」は聞こえてきた。
 車を走らせていると路上に降りている姿も良く見かけるのだが、いざ止まると薮の中に飛んでいってしまいなかなか撮影までには至らない。

 途中、路上に石のようなものが落ちていたので車から降りて見に行くとリュウキュウヤマガメだった。こちらは宮古島のヤエヤマイシガメと違ってちゃんとしたネイティブ。地味な中にもいろんな色が入っていてすごく綺麗な亀だ。手のうろこもガメラっぽくてかっこいい。

 一方鳥のほうはあまり結果の出せないまま時間が過ぎて行き、もうそろそろ帰らなくちゃならないかな、と思い始めた頃、渓流沿いの路上でやっと逃げないアカヒゲの姿を確認。

 車内からの撮影はもう諦めて、そっと車から降りてカメラをセット。背景が道路でいまいちだがとりあえず証拠写真を。ん?こいつも若だなあ・・・

 若ヒゲはしばらく路上で餌をついばんだ後、谷側の木に飛び込んで「ヒンッ カララララ〜」と囀り始めた。声を頼りに姿を探すと結構近くに止まっている。これが黒ヒゲだったらなあ・・・

 と思っていたら、谷の反対側からも「ヒンッ カララララ〜」が聞こえてきた。目の前の若ヒゲもそれに対抗するように「ヒンッ カララララ〜」とやり始める。バトルが始まったのか?

 谷の向こう側に対戦相手の姿を探すと下草の間をチョコチョコと動く赤い影が目に入った。おお〜!いい黒ヒゲじゃないか〜 禿げていないし。ちょっと距離は遠いがまずは一枚。

 黒ヒゲはときおり鋭い囀りをかませながら少しづつこちらに近づいてくる。願わくば目の前にいる若と入れ替わってほしい所だが果たしてどうなるか。彼らたちは必死なのだろうがなかなか面白くなってきたぞ。

 成り行きを見守っていると、木の幹が何だか不自然な感じなのに気付く。なんだろうと覗いてみると今回初のキノボリトカゲだった。今回初見だ。

 と、そちらに気をとられているうちに黒ヒゲの姿は見えなくなり、若ヒゲが勝利の囀りを上げ始めた。どうしたんだ黒ヒゲ!?応援してたのに〜

 とがっかりしていたら、かなり下流のほうから「ヒンッ カララララ〜」が聞こえてきた。まさか黒ヒゲ、負け犬の遠吠えか?だとしたら情けないなあ。

 でも情けないとはいえ撮りたいのは黒ヒゲ。僕も下流のほうに移動してその姿をさがした。

 すると現れたのは新顔のメス!こいつがきつそうな顔をしてヒンカラやっているじゃないか。


 黒ヒゲはこいつの存在に気付き迎撃のため下流のほうへやってきたようだ。若とメスに挟まれてずいぶんストレスたまりそうなポジションに縄張りを作っちゃったねえ。何だか気の毒な黒ヒゲであった。

 黒ヒゲには悪かったけど、こちらはたっぷり楽しませてもらったのでそろそろ帰ろうかね。
とはいえ本音ではもうちょっと大きく撮りたかったな。と、ここで昨日の近場のアカヒゲを思い出した。このまま車であそこに乗り付ければしんどくないし良いんじゃないか?

 というわけで急いで宿に向かったのだが、開け放った窓から聞こえてきた「ホイホイホイ」に引き止められて車を停めた。

 道路わきの崖は小さな滝のようになっている。その水音に混じって「ホイホイホイ」とか「グェグェ」というサンちゃんの声が聞こえてくる。結構近いぞ。

 声のする斜面に目を凝らしていると、葉っぱの中でひらりと長い尾羽が動くのが見えた、よっし!オスだ。宮古島ではオスには見放されていたので、ここで見れればがなりうれしいぞ。と思い一生懸命その姿を追う。しかしヤンバルの森の木は密生していてなかなかすっきりと姿が見えない。大体サンコウチョウってのはこういうゴチャゴチャしたところが好きだからな。

 しかし本当に見づらいなあ、もうちょっと良いところに出てきてくれないかな・・・と思っていると、気持ちが通じたのか葉っぱ被りではあったが一瞬はっきり見えるところに止まってくれたので、すかさずシャッターを切る。

でも禿げてた〜orz

やっぱりこの時期は綺麗なオスはいないんだな。何だかこれですっかり諦めが着いたよ。それでは宿に戻ってアカヒゲだ!

 今日は変に近道をせずまっすぐ宿に戻ると、芝生にテーブルを出してPCで仕事をしていたひーこに一声かけて、そのまま昨日の黒ヒゲポイントへ直行。この道ダンプの行き来が多いので、邪魔にならなそうな広場に車を停めると三脚にレンズをセットして準備完了。あとはアカヒゲを待つばかり。

周りはセミの声がうるさいくらいだ。薮の中にはハイビスカスが咲いていて、カラスアゲハが蜜を吸いに来た。むせ返るような暑さのなか、何だか夢を見ているみたいだ。

 

 やがて「ビッ ビッ」という声と共にアカヒゲが現れた。よ〜し、狙い通りだ。時々「ヒンカラ」を取り混ぜながら常に鳴いていてくれたので位置の把握はしやすい。

 しかし草の生い茂った地面をピョンピョンと跳ねてくるので、葉っぱ被りばかりでなかなか良いところに出てきてくれない。
 そんな中、かろうじて一度だけ枝の上に載ってくれて何とか撮影成功!こいつもいい黒ヒゲだ。でもやっぱり時期的なものなのだろう、羽毛がちょっと痛んでいるな。

 しばらくすると、この黒ヒゲの声に反応して、もう一羽のアカヒゲが近づく気配がしてきた。
黒ヒゲも負けられねえ、って感じで「ビッ ビッ ヒンカララララ〜」と対抗する。そして現れたのはメスのアカヒゲ。こいつも羽毛が乱れ気味だ。

しかし何でメスはいいところに止まってくれる上、近くに寄らせてくれるんだろうねえ?
このあとアカヒゲ2羽はもつれるように森の奥に飛んで行き、辺りは再びセミの声に占領された。

これでこの日の朝撮りは終了。アカヒゲもそこそこ撮れたし満足満足。

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