まずは偵察
 遠征の常でこの朝も4時頃に目を覚ます。どこからか一番鳥の声が聞こえてくるが、カーテンの隙間から覗いた外はまだ真夜中って感じだ。
 そしてようやく東の空が明るくなってきたのが午前6時。バルコニーに出てみると、あたりはなんだか霧がかかったようにもやっていて、昨日の晩よりさらに肌寒い。今朝は短パンは止めておいたほうがよさそうだ。

 まだ撮影ができるほどの光量にはぜんぜん足りないが、このまま部屋にいるのももったいないので出かけることにする。今回は明日に備えての偵察ってことで、ロクヨンと三脚は持たず、シグマの50-500mmを付けたD4にFZ150だけの軽量装備だ。どれくらい歩くかもわからないからなあ。

 部屋を出てエレベーターホールに行くと、そこから周辺が見渡せた。ホテルの周りには荒地が広がっていて、プールの横、隣のホテルとの間には水路のような川が横たわっている。その上流はワンドになっていて、マングローブが茂っているようだ。あそこなら鳥がいるかもしれないな。

 ロビーに下りてまずはプールの横に水路に行ってみると、こちら岸の足元からイソシギらしき鳥が飛び立った。
 対岸の木に止まっているのはコサギかな。
まだまだ暗くてシャッタースピードは上がらないのでISOを12800まであげて撮影。さすがD4高感度に強いのだ。 

 川沿いに上流に向かっていくと、さっき目星をつけていたホテルの裏側にあるワンドにでた。ここならナンヨウショウビンくらいいるんじゃないかと期待して抜き足差し足で水際に近づいていったが、いたのはサギ類ばかり。多少目を引くのはアカガシラサギだが、ここらへんじゃ普通種だ。その上いまは冬期だから仕方ないが、パッとしない冬羽だ。


 小鳥系はタイヨウチョウの気配もないのでこの場所はあきらめてホテルの敷地の外に行ってみる事にする。
 ワンドに沿ってさらに奥に進むと従業員用駐車場はあり、そこを過ぎるとエントランスの脇に出た。この頃になるとだいぶ太陽も昇ってきたようだが、空には雲が多くて少々ドンヨリぎみだ。

 昨日の晩歩いたホテルの前の通りに出て、さてどちらに行こうかと考えたが、とりあえず昨日のインド料理屋の先のほうまで行ってみることにした。

 しかし町並みはなかなか途切れず、まともに鳥撮りできそうなところがない。エレベーターホールから見た感じだと、この家並みの裏側はずっと荒地っぽかったのだが・・・

 そちらに入れそうな路地があるたびに覗いてみるが、マイナがうろうろと歩きまわっているくらいで荒地なんてどこにもない。

もうちょっとましな鳥はいないかと見渡すと、アンテナの上にかろうじてベニバト発見。

  しかしこれじゃしょうがない。せっかくの貴重な朝撮り時間がどんどん過ぎていくばっかりだ。

 町並みはホテルと平行するように続いていたので、一度引き返して今度はホテルから離れる方向に伸びている道を進んでみるとだんだん家並みがまばらになってきて、しばらく行くと道の両側は目指す荒地っぽくなってきた。こちらが正解だったか!さあ、本格的に鳥撮り開始だ。何がいるかな?

 まず見つけたのは荒地に立つ木のうえにいたカノコバトのペア。

きれいな声でさえずっているのはコシジロヒヨドリ。やっと鳥撮りという雰囲気になってきた。

道路沿いにはずっとワイヤーが張ってあったので、路上からわきの草むらを眺めつつ歩いていくと、
数羽の小鳥が歩き回っているのが目に入った。ヒメマミジロタヒバリだろうか?

 これを撮影していると、その奥をもう少し大きめの鳥が歩いているのに気づいた。
おお〜ヤツガシラだ!やっとちょっとポイントの高そうな鳥に会えたぞ!とりあえず証拠写真を一枚!

 しかし50−500mm手持ちはいまいち安定しないので、カメラを乗せて固定できそうな杭の所まで移動している間に気づかれてしまい、いいポーズをとる前に飛ばれてしまった。まあまだ初日だ、これからもチャンスはあるだろう。

 気を取り直して先に進むとワイヤーの切れ目があった。そこから荒地の中に入りこんでみると、奥のほうは2mほどの崖になっていた。その向こうの藪の中から飛び出したのはシマアカモズ?

 崖下の窪地には小川が流れていて、そこを飛び回る鳥の影が見えた。なんだか気になる動きだったのでよく見えるところまで出てくるのをしばらく待ってみる。すると現れたのはムナオビオウギビタキだった。この川に飛び込んで水浴びをしているようだ。これで2種追加、なんだか調子が出てきたぞ〜

 足元には白黒のコントラストが派手なシジミチョウが止まっている。そっとしゃがんで50−500mmの最短まで近寄って撮影。 鳥をビシッと撮るにはいまいち物足りないこのレンズだが、こういうときはとっても便利だ。

 そのまま草むらを歩いていくとブッシュの向こうに牛の姿が見えた。足元には糞も一杯落ちている。
ここら辺は放牧地のようだ。そして牛の周りにはアマサギがたたずんでいた。牛とアマサギは良く似合うな。

 牛がこちらの様子を伺うように身じろぎするとアマサギたちは一斉に飛び立った。牛は顔を持ち上げてじっとこちを見つめている。間近で対峙すると中々の迫力だ。その先にも数頭の牛の姿が見える・・・ここを突っ切るのは少々勇気が要りそうなのでひとまず道路まで撤退することにした。

 舗装路まで戻り再びホテルを背にして進んでゆくと、道路わきの木の中でミミジロヒヨドリが騒いでいた。

オウチュウが電線にタッチアンドゴーを繰り返している姿もそこここで見かけるが、動きが激しくて中々撮影できない。
道端の草の上にはなかなか南国っぽい柄のトンボが止まっていた。

 潅木林の奥で「ジッジッ」と鳴きながら飛び回る小さな鳥影、。あの声、あの動きはハナドリかな、と思って少し腰をすえて狙ってみる。ちょこまかと動き回るので中々ファインダーに入れられなかったが、やっとのことで捕らえたその姿は予想と違ってムシクイ系の鳥。キマユムシクイだろう。

 やがて前方に広い道路が見えてきた。昨日は暗くてよくわからなかったが、幹線道路からこの道を通ってホテルに来たみたいだ。結構歩いたなあ。ロクヨンじゃなく軽量の50−500mmとはいえD4との組み合わせは結構腰に来る。あまりぱっとした鳥もいなかったけれど、時間ももう8時半だしそろそろホテルに戻ろうかな。

 しかしいつまでたっても雲がなくならないなあ。気温も低めだし、果しこんなんでこの先南国ライフは楽しめるのだろうか・・・

 来た道を引き返しながら、来るとき鳥を見かけたポイントをもう一度チェックしていく。
 さっきの牛ポイントのアマサギたちは木の上に避難していた。

 遠くからオオバンケンの声が聞こえてくる。
ミミジロヒヨドリのいた木にはメグロヒヨドリがとまっていた。こいつも普通種だなあ・・・

 ヤツガシラのポイントには10羽くらいのヒメマミジロタヒバリの群れ。その上空を飛んでいったのはスキハシコウだ。ロクヨンだったら間に合わなかったろうが、手持ち500mmのおかげでなんとか捉えることだけはできた。

 そしてその先のちょっと大きな木でやっとオウチュウゲット。ほんとはヒラヒラ飛んでいるところを撮りたかったのだが中々難しいのだ。

 ホテルまでもうすぐそこと言う所まで戻ってきたあたりでお目当てのインドブッポウソウらしき鳥が飛んでいく姿を見かけたが、はるか彼方まで行ってしまったので追いかける気力もわかなかった。
 ナンヨウショウビン、アオショウビンの姿も見えないし、今日はもうこれでお仕舞いにするか。と思ったら、ホバリング気味の姿勢で飛んでいる、嘴の長い鳥の姿が目に入った。おっ、もしかしてアオショウビン!?と思ってファインダーに入れると予想外のヒメヤマセミ!

 香港なんかにいるってのは聞いていたけれど、僕がこいつに会ったのはアフリカでだけだったので、こんなところにもいるんだなあとちょっとびっくりした。

 最後にちょっとだけいいのに会えたので気持ちもちょっとだけ幸せになれたけれど、やはりこの朝の鳥撮りにはいまいち満足がいかないままホテルに到着。
 これじゃ明日の朝、びあしんさんを案内してもあんまり良い成果はでないかもしれないな・・・

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